【レビュー】橋本の何でもレビュー#2 Happy Hacking Keyboard

2021/05/28

パソコン 何でもレビュー

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大学生協で、新入生向け事業を企画・運営するアルバイトをしてきました。年間の仕事内容は、会議、会議、会議。3、4月の短い期間には集中的に、実際に新入生・保護者に接する機会があるわけですが。

会議につきものなのが、議事録です。私たちの組織では、議事録は完全な発言録をとることが慣習になっています。出席者の発言をリアルタイムで、一言一句欠かさずに文字起こしするわけです。当然、人間が口で話すのと同じスピードでキーボードを叩くことが要求されます。

今回は、このような高速タイピングを助けてくれる優秀なキーボードをご紹介します。


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「橋本の何でもレビュー」について

高70回 橋本が日常的に気に入って使っているアイテム(完全なる私物)を、勝手気ままにレビューします。アフィリエイトでもなければ、メーカーとの利害関係等も特にありません。

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その名は Happy Hacking Keyboard

HHKB

名前は "Happy Hacking Keyboard" と言います。略して "HHKB"。

私が使っているのはその中で、"Professional HYBRID Type-S 無刻印/墨(英語配列)" というモデルです。日本語に直すと、「有線・無線両用」で、「静音」、「キーの印字を省略した」「黒い」モデル、配列はアメリカのパソコンと同じです(日本語キーボード固有のキーがなく、記号の配置なども異なる)。「PFU」という、富士通の子会社が製造しています。

ここからは、HHKBシリーズ共通の特長を4つのポイントに整理して説明します。

1. カーソルキーがない

HHKBはご覧のとおり、一般的なキーボードに比べてキーの数が少なく作られています。当然その分だけ、「本来あるべきキーが欠けている」仕様になっています。

一般的なキーボード(奥)との比較

代表的なのが、カーソルキー。普通のキーボードでは右下に凸の字形に配置されているものですが、HHKBにはそれがありません(ただし、日本語配列モデルにはある)。

では文書の中を移動したいときどうしたら良いかと言うと、右下にある「ファンクションキー」と他のキーを組み合わせて上下左右を指示するのです。ページ送りや行頭・行末への移動も同様で、すなわち

HHKBのカーソル操作は [Fn] と同時押し

これらのキーが独立に存在しないのは、一見不便そうに感じます。

でもよく考えてみてください。普通のキーボードのカーソルキーやPgUp/Dn, Home, Endキー、右の枠外にあって遠くないですか?ホームポジションから大きく手を動かすので、素早く正確に押すことが難しいと感じます。議事録をとっている途中、カーソル操作でもたつくと、その瞬間の発言を書き逃してしまう可能性があります。

その点、HHKBのカーソル操作は最小限の手の移動で済ませることができ、咄嗟に押しても間違える心配はほとんどありません。そんなわけで、一見するとネガティブポイントに聞こえる「カーソルキーがない」という特徴は、実はHHKB最大(と私は思っています)の強みとなっているわけです。

2. CtrlキーやBackSpaceキーが近い

HHKBは一部のキーを省略するほか、よく使う2つのキーを押しやすい位置に移動しています。それらは(左の) [Control] と [BackSpace](ただし、後者の移動は英語配列モデルのみ)。[Control] は [CapsLock] の位置に、[BackSpace] は [Enter] の真上にそれぞれ引き出されています。

ここでもう一度、皆さんが普段お使いのキーボードを思い出してみてください。[Control] + C/X/V でコピペなどする際、Controlキーがやけに手前にあり手全体を後退させなければならず、押しにくいと感じたことはありませんか?大した用途のないCapsLockキーの位置をControlに明け渡したらショートカットの操作がどれだけ楽になるか、皆さんにぜひ体験してみていただきたいと思います(実のところ、この入れ替え自体はフリーソフトで簡単に実現可能です)。

もう一つ移動されているのが、BackSpaceキー。本来の位置より一段下に下がっており、小指を遠くに伸ばす負担が軽減されます。会議が終わるまで数時間、キーボードを叩き続けても最小限の疲労で済むわけです。

私のHHKBの配列、青いキーは独自にカスタマイズしている

※ HHKBデフォルトの設定では、[Enter] の真上は [Deleate] で、[Fn] + [Deleate] = [BackSpace] ということになっています。キーボード裏面のスイッチで、単体押し = [BackSpace] に変更することができます。

3. セブン銀行ATMの押し心地

配列のお話はここまでにして、次は押し心地について。HHKBはノートパソコンの「ペチペチ」「カチャカチャ」、あるいはよくある外付けキーボードの「ぬとっ」としたタイプ感ではなく、「スココココ」と滑らかに沈む独特な感触を有しています。これはスイッチの機構が関係していて、「静電容量無接点式」という珍しいスイッチを採用しています。

静電容量無接点式のスイッチは耐久性が高いことで知られ、このために金融機関の業務用キーボードによく使われています。一般の消費者が触れるところでは、セブン銀行ATMのテンキーが同じ方式のスイッチを採用しているそうで、確かに「スココココ」と癖になる感触は共通しています。

一般的なキーボードに使われている「メンブレン式」のスイッチと異なり、キーを底まで打ち抜かなくても文字が入力されます。この特性はフワフワと宙に浮いたようなタイピングを可能にし、長時間打ち続けても指先に負担がかかりにくくなっています。

4. 長持ち設計

HHKBはもともと、「一台のマイキーボードをいつも持ち運び、ずっと使い続ける」ことを目的に作られました。開発された1996年当時(私はまだ生まれていません)、世の中のコンピュータはキーボードの配列が統一化されておらず、ユーザーはコンピュータを買い替えたり出先で作業したりするたびに、新しい配列を覚え直したり打ち癖を矯正したりする必要に迫られたということです。そこで「いつも、ずっと使えるマイキーボード」として発売されたのがHHKBでした。

一部のキーを省略してコンパクトな設計としているのは、「いつも持ち運ぶ」方に対応しています。そして「ずっと使い続ける」ことができるように、HHKBは以下の2つの特徴を備えています。

  1. 耐久性の高い静電容量無接点式のスイッチを採用
  2. 二次電池の寿命には限りがあるため、敢えての乾電池式

乾電池がこの世から消え去るまで、当分余裕があるはず

配列や押し心地が理想的なこのキーボードが、何十年にわたって長持ちするというわけです。筆記具で言えば万年筆のようなキーボードと言えるでしょう。

まとめ

今回は私が出会った「理想のキーボード」、Happy Hacking Keyboardを紹介しました。高速でストレスフリーなタイピングを可能にし、さらに長持ちという逸品です。日常的にたくさんの文字を打ち込むという方には、HHKBの導入を心からオススメします。

ELECOMの巨大トラックボール、FILCOのリストレストと一緒に使っています

高70回 橋本

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