【中高生向け】東京大学の推薦入試(① 学校推薦型選抜の制度・概要) by 鴨脚

2021/05/30

高校生向け 大学進学 中学生向け 東京大学

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昨日5月29日、東京大学で高校生向けの「学校推薦型選抜オンライン説明会」が開催されました。私は学生「ファシリテーター」としてこれに参加し、高校生の質問に答えたり、大学生活の実態を紹介したりしました。

東京大学駒場キャンパス1号館(旧第一高等学校本館・有形登録文化財)

私は2018年度・第3期の推薦入試(現在の学校推薦型選抜)で、磐南理数科から東大理学部に合格しました。現在は理学部地球惑星物理学科の4年生です。昨日の説明会では残念ながら、母校の後輩を見かけることはありませんでした。この記事では、後輩たちが積極的に推薦型選抜を利用してくれることを願って、また地元の中学生が東大への挑戦も視野に入れて磐南進学を選んでくれるよう、本学学校推薦型選抜の制度(①)と私の受験体験(②)を紹介したいと思います。

前提:東大の一般入試

学校推薦型選抜の紹介に入る前に、まずはいわゆる「普通の入試」、前期試験(一般入試)の簡単な説明をしておきます。

試験自体は、国立大学の入試として一般的な「共通テスト+二次試験」の組み合わせです。特別な点があるとすれば、他大学では「学部・学科」を選んで願書を出すべきところで、東大では「科類」を選択するという点でしょう。学部は「教養学部」一択です。

「科類」とは何かと言えば、教養学部のコースの名前です。東京大学ではすべての1、2年生が教養学部の「前期課程」に所属し、6つの科類ごと異なるカリキュラムを履修することになっています。それぞれの科類の名前と、主に学ぶ内容は以下のとおり。

  • 文科一類 法・政治中心の社会科学
  • 文科二類 経済中心の社会科学
  • 文科三類 言語・思想・歴史中心の人文科学
  • 理科一類 数学・物理学・化学中心の数理科学・物質科学・生命科学
  • 理科二類 生物学・化学・物理学中心の生命科学・物質科学・数理科学
  • 理科三類 生物学・化学・物理学中心の生命科学・物質科学・数理科学
2年間の教養課程を終えた東大生は、3年生になると各自の興味に応じて、(後期)教養学部を含む10の専門学部に分かれていきます。科類ごとに主な進学先が決まっていて、ざっくり(正確な情報は東大ウェブサイトを参照してください)
  • 文科一類 法・教養
  • 文科二類 経済・教養
  • 文科三類 文・教育・教養
  • 理科一類 工・理・薬・農・教養
  • 理科二類 農・薬・理・工・教養
  • 理科三類 医

3年生からの進学先を決めることを「進学選択」と言います。第一原則として、「進学希望は、2年生前半までの成績が良い者ほど通りやすい」。もう一つの原則としては、「上記の『主な進学先』から外れるような変則的な進学は定員が限られており、特別に良い成績が必要」という具合になっています。

以上が、「普通の東大入試」および入学後の「進学選択」の仕組みです。

では学校推薦型選抜は?

「一般」の説明が終わったところで、「特殊」な学校推薦型選抜のお話に入りましょう。

まず願書で志望するのは、「学部・学科」です。学校推薦型選抜入学者は、進学選択を行わないのです。前期教養学部に通わないわけではなく、3年生からの進学先が固定された状態で前期課程を過ごすのです。カリキュラムも基本的に同じ(ただし、教養課程の時間割に支障しない範囲で専門課程の授業を「早期履修」することができます)。

テストの内容は、「書類選考+面接+共通テスト」。提出を求める書類や面接の方法・内容は学部により異なります。

制度の外形は、言ってしまえばこれだけです。でもここで記事を終わりにしたら、私は袋叩きに遭うことになるでしょう。皆さんが気になるのは、書類選考や面接の内容、つまり「どんな人が受かる(受けられる)のか」ですよね。

どんな人が受かるの?

「どんな人が受かるのか」=「どんな人が求められているのか」は、「アドミッション・ポリシー」という文書にまとめられています。アドミッション・ポリシー自体はどの大学でも定めている、ごくありふれたものです。しかし一般入試では大学の求める「意欲」や「能力」、「人格」などは入試結果にさほど反映されず、とにかく筆記試験の得点を稼ぐ力技で合格者が決まりがちです。

推薦入試は違います。書類選考や面接の採点基準は、アドミッション・ポリシーをそのまま反映することができるのです。そういうわけですから、ここでは「どんな人が受かるの?」という疑問の答えを探して学校推薦型選抜のアドミッション・ポリシー東大全体のアドミッション・ポリシーとは別に用意されています)を覗いてみることにしましょう。

3つの章が立てられています。最初の「東京大学の使命と教育理念」では、東大が社会において自認している役割、学生には教養課程で『可能な限り多くを学』んでほしいということ、そして教養課程が『世界最先端の研究』につながる専門教育の基礎になることが語られています。推薦生も一般入試受験者と同じように、教養課程を大切にすることが求められているのです(後日別の記事で、東大教養課程の魅力を皆さんに紹介したいと思います)。

次の章「期待する学生像」では、上記の教育理念に共鳴する生徒を求めていると明言しています(それはそう)。さらに、東大での学び・人間的成長に強い興味・関心・意欲を持っていることが重要であると。学校推薦型選抜の狙いが具体的に語られているのはここからです(大事な部分なので、一文まるごと引用させていただきます)。

そうした意味で,入学試験の得点だけを意識した,視野の狭い受験勉強のみに意を注ぐ人よりも,学校の授業の内外で,自らの興味・関心を生かして幅広く学び,その過程で見出されるに違いない諸問題を関連づける広い視野,あるいは自らの問題意識を掘り下げて追究するための深い洞察力を真剣に獲得しようとする人を東京大学は歓迎します。

「どんな人が受かる/受けられるの?」という問への答えはこれに尽きると言って良いでしょう。

最後の章、「学校推薦型選抜の基本方針」では具体的な目的として、推薦入試を通じて『学生の多様性を促進』し、また高校の取り組みを評価、高校生の多様性を発掘することが述べられています。

磐田南高校に当てはめて考える

アドミッション・ポリシーを読んで分かるとおり、学校推薦型選抜では皆さんが高等学校で、自らの興味・関心をどれだけ追究してきたかが試されます。磐田南高校という場所は実は、これにうってつけの環境なのです(その証拠として、実際に東大推薦入試の合格者を排出しています)。続編の②で、磐南のどこが学問的探求に適しているのか、また私自身がどのような高校生活を送りどのように推薦入試を受けたのか、紹介していきたいと思います。

高70回 鴨脚(静大附属浜松中学校出身、地学部、東京大学理学部4年生

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