【大学生向け】Wordで数式を打とう!

2021/05/27

Word パソコン 大学生向け

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こんにちは、レポートに追われてブログ更新が滞っていた橋本です。大学生活がオンラインになってからこの方、とにかく大量のレポートが課されるようになりました。対面で期末テストをすることが難しく、「オンラインテスト」という何かと面倒な成績評価方法も不人気であるためです。そしてそのレポートというものも、提出は基本的にオンライン。そんなわけで、手書きのレポートというものも、長いこと書いていないのです。

私は理学部地球惑星物理学科で学んでいます。学科の特性上、私の書くレポートにはほぼ確実に数式が含まれます。

先ほど提出したレポート(一部)

世の中で数式を含む文書を作るとなると、真っ先にイメージされるのが「\TeX(テフ)」や「\LaTeX(ラテフ)」といった組版処理システムです。誰でも無料で利用でき、数式や図表、ソースコード、階層化された見出しなど様々な要素を含む文書を、市販の書籍みたいに綺麗な体裁で出力することができます。その一方で、文書の作成はプログラミング言語のようなコマンドで実施する必要がある、文書の完成形をリアルタイムで確認することができない、など非常にとっつきにくいツールであるというのが正直なところです。

そこで私がレポート執筆に使っているのは、Microsoft OfficeのWord。えぇ、みんな大好き、あの青い「W」印のソフトです。実は\TeXなどの難しいツールを持ち出さなくても、慣れ親しんだWordでそれなりに複雑な数式を打ち込むことができるのです。Wordに数式を打ち込むと、リアルタイムで数式を眺めることができます(当たり前と言えば当たり前ですが)。そんなわけで私は、紙とペンで下書きをするようなことはあまりせず、レポート本文を書きがてらWord上で計算・式変形などもしてしまうことが多いのです。移項や代入もコピペで一瞬ですしね。

前置きが長くなりましたが、今回はそんなわけで、皆さんにWordで数式を打ち込む方法をお伝えしたいと思います。なおこの際、マウスを使って画面上のボタンをクリックするような操作方法はなるべく避けて、キーボードショートカットを使う方法を優先的に紹介していきます。なぜなら、その方が速く入力できるから(たぶん)。マウス操作よりキーボード操作の方が速いという点よりは、キーボード操作により手書きに近いスピードで打ち込めるという点が重要だと思っています。Wordを使うことによって手書きの何倍も時間がかかるというのは、あまり嬉しい状況ではありませんから。

※ キーボードショートカットはWindowsのものを基本に、Macのものをカッコ付きで記載します。Mac版については手元の環境で動作確認ができないので、もしかしたら間違いを載せているかもしれません...

※ 業界で広く愛用されていることからわかるとおり、\TeXは学術文書作成の非常に強力なツールです。こちらを習得してみたいと思った方はぜひ、TeX Wikiなどの解説ページを見てみてください。

Wordの数式入力に挑戦!

数式を書き入れたい場所にカーソルを合わせ、

[Alt] + [shift] + [-]([control ⌃] + [shift ⇧] + [-])

を同時押ししましょう(USキーボードの場合 [Alt] + [=])。

数式入力モードに入った

すると「ここに数式を入力します。」という枠が表示されます。
手始めに、マクスウェル方程式

を打ち込んでいきましょう。

初手、連立を表す「{」を入力します。
これはキーボードショートカットが分からなかったので、「数式」タブ右側「構造」>「かっこ」から「場合分け」を選択。

初期状態で2行分のスペースしかないので、「{」の中で[Enter]([return])を連打して4行に増やしましょう。

4行に増やした
では一行目の磁束保存の式を入力します。
∇(ナブラ)のようにパソコンのキーボードに存在しない記号・文字は、「\」マーク(Macの場合は[option ⌥]同時押し)に続けて綴りを書いてスペースキーを押すと入力できます。すなわち、

"\nabla" > [space]([option ⌥] + "\" > "nabla" > [space])

内積の「・」は「\cdot」です。
次の「B」はキーボードの「B」で構わないのですが、ベクトルなので太字(Bold)のショートカット

[control] + "B"([command ⌘] + "B")

を先に押しておきましょう(「B」を打ち終わったら同じショートカットで太字解除)。「x」も同様です。
「()」や「,」、「=0」はキーボードにそのまま印字されていますね。
そんなこんなで、一行目は打ち終えることができたでしょうか。

磁束保存の式、完成

2行目のファラデー-マクスウェルの式、こちらの第一項では外積をとっています。
外積の「×」は「\times」で入力できます。
また偏微分の記号「∂」は「\partial」、割り算の横棒は「/」で入力することができます(いずれもスペースキーで変換)。
3行目右辺の「ρ」は「\rho」、これで一通りの式を打ち込むことができるはずです。

4行目まで打てた!
それでは最後に、項の位置を縦に揃えたり、式番号を入力したりなど、細かい体裁を整えていきましょう。
項の位置を揃えるには、「&」のキーを使います。
まずは4本の式の先頭で一回ずつ、「&」キーを押すと...

行頭が左揃えになった!

数式の先頭が左揃えに揃いました!
続けて

               & ∇・B & = & 0
               & ∇×E & + &B/∂t & = & 0
               & ∇・D & = & ρ
               & ∇×H &&D/∂t & = & j

という具合に、揃えたい場所すべてに「&」を挟むと

左詰めになった、「=」の場所を揃えたい
すべて左詰めで揃いましたね。
第1、3式の「=」以下を右に送るには、「=」の左に2つの「&」を追加します。
すなわち、
               & ∇・B &&& = & 0
               & ∇×E & + & ∂B/∂t & = & 0
               & ∇・D &&& = & ρ
               & ∇×H & - & ∂D/∂t & = & j

仕上げの式番号です。これは「#」に続けて入力し、エンターキー(リターンキー)を押します。
すなわち、

               & ∇・B &&& = & 0 #(1)
               & ∇×E & + & ∂B/∂t & = & 0 #(2)
               & ∇・D &&& = & ρ #(3)
               & ∇×H & - & ∂D/∂t & = & j #(4)

エンターキーを押さないと反映されないことに注意!

余分な行ができてしまうので、右クリック>「数式の削除」で消してしまいましょう。

余分な行は「数式の削除」で消す

というわけで、晴れてマクスウェル方程式の入力が完了しました!

マクスウェル方程式の完成

複数行にわたる式変形

レポートを書く際には、マクスウェル方程式のように一行完結の方程式を載せるばかりでなく、複数行にわたる式変形を書き連ねる場合もあります。
sinのテイラー展開

を例に、その方法を説明します。

例によって

[Alt] + [shift] + [-]([control ⌃] + [shift ⇧] + [-])

で数式モードに入ります。
sin は、

"sin" > [space]

で入力することができます(\マーク不要)。

 初手、sinを用意

引数としてはxを入力しましょう。
右辺のシグマ記号は、以下を一気に打ち込んでください。

"\sum_(n=0)^\infty" > [space] > [space]
(Macは\と[option ⌥]同時押し
「\sum」がシグマ記号、「_」が下付き、「^」が上付き、「\infty」が「∞」を表します。
結果は

シグマ記号の中身は簡単ですね。
シグマ記号に対してしたのと同じように、累乗の指数は「^」に続けて打てばOKです。

一行目完成

それでは式変形をするために、改行を打ち込みましょう。
ここでエンターキーを押すと数式が途切れて平文のモードに戻ってしまうので、

[Shift] + [Enter]([shift ⇧] + [return])

を同時押ししてください。
そのまま続きを書いて(「≈」は「\approx」です)、

とりあえず打ち終わり

さてこの場合、行頭が揃っていてもあまり嬉しくありませんね。
等号の位置が縦に揃って欲しいわけです。
そんなときには、数式全体を選択して右クリック>「等号揃え」を選択します。

するとこのとおり、

式変形完成!

理想の体裁となりました。

まとめ

ここまで、Wordを使って数式を打ち込む方法を簡単に紹介しました。もちろんすべての文字や記号の打ち方を紹介できたわけではありませんが、それぞれの文字・記号を呼び出す「おまじない」はWordの画面上でも調べることができるので、段々と覚えていってほしいと思います。

Wordで記号の名前とショートカットを表示させた様子
きっと\TeXのコマンドを覚えるよりはだいぶ楽に、数式を含むレポートを書くことができるはずです!きっと。

高70回 橋本

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