【中高生向け】東京大学の推薦入試(② 私が東大推薦を受けた経緯) by 鴨脚

2021/09/06

高校生向け 大学進学 中学生向け 東京大学

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前回の記事では、東京大学の学校推薦型選抜(旧推薦入試)の制度や概要について説明しました。今回は続編ということで、私自身の高校生活や受験体験を紹介していきます。学校推薦型選抜の受験を検討している皆さんの参考になれば幸いです。

東京大学本郷キャンパス赤門(旧加賀屋敷御守殿門・重要文化財)

私の高校生活

地学部

私が磐田南高校理数科に入学したのは2015年4月のこと。当時の磐南は文科省よりSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けており、私はそれに魅力を感じて、浜松からの越境通学を選びました。

部活は地学部に入りました。「地質班」「地震・気象班」「スプライト班」「天文班」の4つの班に分かれて活動していたのですが、同期はわずか3人。各人2つの班を掛け持ちすることになり、他の学年に比べたくさんの経験を積むことができました。私はスプライト班と地質班に参加。

炭酸飲料「スプライト」の瓶
User:Surachit, CC BY-SA 2.5 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5>, via Wikimedia Commons

スプライト... 別に↑の炭酸飲料を研究していたわけではありません。ここで言う「スプライト」とは、積乱雲から地上に雷が落ちるのに付随して、雷雲の上方、中間圏(高度50-80 km)で赤く光る放電現象のことです。

放電現象の「スプライト」
ESO, CC BY 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/4.0>, via Wikimedia Commons

磐田南高校の窓や屋上にはスプライトを観測するカメラが設置されており、他の高校とデータのやり取りもしながら地学部で研究をしているわけです。

一方の「地質班」は当時、鮫島海岸の地形を研究対象としていました。測量器具を背負い、高校から海岸まで自転車で通ったのは良い思い出です。

これら2つの班で日々研究に励み、いくつかの大会で研究発表もしました。JpGU(日本地球惑星科学連合大会)高校生セッション優秀賞をはじめ、賞などもいくつかいただきました。これらの実績を利用して、後に推薦入試を受験することとなったわけです。

理数科

理数科といえば「理系の(進学に関する)エース学級」ということになるわけですが、私は入学時点で東大受験を考えていたわけではありません。まずは阪大あたりを目標にしようと思い最初の模試で志望校をそう書いたら、担任のI先生に呼び出され「とりあえず東大と書き直せ」。おそらくクラスの全員が同じように、東大か医学部を志望校欄に書くよう強制されたものと思います。当時は「なんと大それた目標だろう」と感じたものですが、結果的には本当に東大に入ってしまったわけですから、恐ろしいことです。もちろんクラスの全員が東大・医学部に進学したわけではないのですが、目標を高く定めることで着地点を伸ばす効果はそれなりにあったのではないでしょうか。少なくとも、もし私が阪大を目標としたまま3年間を過ごしていたならば、どうしても東大に進学しようということにはならなかったはずです。

推薦入試を受験することについても、私が希望したというよりはI先生からお勧めいただいたものでした。もともとは一般入試のみを受けるつもりであったところ、「チャンスを増やすために推薦入試と両方受験せよ」とお勧めいただいたのです。「チャンスを増やすために」というところがポイントで、推薦入試の準備のために多くの時間を割くことはせず、一般入試の受験を前提とした勉強は淡々と続けていたのでした。

磐南という環境

磐田南高校の校舎(当時)

先述のとおり、私は毎日天竜川を越えて高校に通っていました。周りからは散々、物好きだと言われたものです。その磐南から東京大学へと押し上げていただいたのですから、少なくとも大学進学の面では、ひとり越境通学を選んだのは間違いでなかったと言えます。

アカデミックな空気にいつも接することのできる高校でした。地学部では顧問(当時)のA先生のご指導のもと、高校生としてはかなり本格的な研究活動に没頭しました。日中の授業を担当される先生方も、県下トップレベルの教員が集められています。受験勉強の指導も熱心にしてくださいますが、授業の端々に学問への愛が見え隠れします。理数科では「高校の卒業研究」と言うべき「課題研究」が行われ、地学部等の研究系の部活に所属しない生徒も、理系科目の先生方について研究活動の体験ができるようになっています。

所謂「受験勉強」となるような座学を決して手抜きしない一方で、いつも学問の風を感じることができる――このような磐南の環境は、東大の学校推薦型選抜(と一般入試の併願)と非常に相性の良いものです。この記事でご紹介した私の来歴というのはまさに、この相性の良さにうまく引き上げられたものと言えましょう。

もちろん、私の物語はあくまで私だけのもの。この記事を読む皆さんがまったく同じ道を歩むということはないでしょうし、5年前とは磐南の状況も変化しています。文系の場合どうなるかについても、私は紹介することができませんでした(磐南から東大文系学部への推薦入試合格もちゃんと例があります)。間違いなく言えることは、磐南は目先の受験勉強だけでなく、大学以降の学問につながる様々な体験のできる素晴らしい環境であるということ。この記事を読んだ磐南生の皆さんはぜひ、自分の過ごしている高校生活で東大にアピールできる要素が紛れ込んでいないか、考えてみてください。また地元の中学生が読んでいてくれたならば、「磐南に進学すると、『なんで、私が東大に!?』を地で行くことになるかもよ」と申し上げておきましょう。

高70回 鴨脚(静大附属浜松中学校出身、地学部、東京大学理学部4年生)

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